オリジナル作品について

2025/10/13

刺繍アートフェスティバルへ出品の方、お申し込みをご検討の方、
このブログをご覧いただきありがとうございます。

今回は「オリジナル作品」についてご案内します。
 

刺繍アートフェスティバルにおける「オリジナル作品」

刺繍アートフェスティバルでは、作品を「作者ご自身のオリジナルデザイン」として募集しています。
 

オリジナルと言っても人それぞれ解釈が違ったり、いざ制作となると「これはいいのだろうか?」と不安に思ったり、迷われた方も多いのではないでしょうか?
この記事では、過去によせられた質問から「刺繍アートフェスティバル」におけるオリジナル作品について解説いたします。
 

オリジナル作品の定義

「オリジナル」とは、構図・配色・デザイン・アイデアを自分自身で考え、独自に表現した作品を指します。

反対に、他者のデザインを模写・トレースしたり、市販の図案を使ったものは“他人の著作物”となるため、出品できません。

古くからある紋様やモチーフを使ってもいいですか?

唐草、幾何学模様、花文様など、伝統的モチーフは誰の著作権にも属さない、一般的には共有文化財とみなされています。それらを自分の構図・配色・アレンジで組み合わせた作品はオリジナルと認められると考えます。

OK  出展できる例
・古典柄をベースに、自分で構図・配色・仕立てを考えた作品

・伝統文様を引用しながら、新しい世界観に再構成した作品



 NG  出展できない例
・図案集や書籍の図案をトレースしたり、配置、構図をそのまま使用した作品 

伝統技法とオリジナル表現について
 

シュバルム刺繍やホワイトワーク、ハーダンガーなど、伝統的な刺繍技法には長い歴史の中で受け継がれてきた決まったモチーフやステッチがあります。

そのため、どんなに配置や構図を工夫しても、他の作家と似た印象になることが避けられない場合もあります。これは決して悪いことではありません。

むしろ、伝統技法を忠実に学び、再現できること自体が刺繍文化を守り、未来へつなぐ大切な役割です。
 

ただし、フェスでは「オリジナル」が感じられる作品を歓迎しています。同じ技法・同じモチーフであっても、そこに自分なりの発想・テーマ・思いを込めて制作してください。

例えば、配色に個性を出す、モチーフの意味を再解釈する、作品タイトルや背景布選びで“物語”を持たせる。

こうしたことで「あなたの作品」として輝きが生まれます。

伝統を受け継ぎながら、現代の刺繍アートとしてのオリジナル性が表現できたら素敵だなと思います。

アンティーク図案は使っていいですか?

19世紀以前の刺繍図案集や古書など、いわゆるアンティーク図案は、著作権の保護期間がすでに終了しており、法的には自由に使用しても問題はありません。

しかし、これらの図案は広く出回っており、他の作家も同じ図案を使って作品を制作している場合があります。作品が重複したり、意図せず他者と似た印象になってしまうこともあります。 

そのため、そのままアンティーク図案を刺した作品は「オリジナル作品」とは言えず、「再現作品」となります。
 

法的にはOKでも、フェスの“創作性”という観点からはオリジナルとはみなされません。



Point
 複数の図案を組み合わせて新しい構図をつくる。配色・素材・ステッチを変え、現代的な表現にする。自分のテーマや物語に沿って再構成するなどして、再現作品からオリジナルへ進化させましょう
 

 

名画・芸術作品を参考にした「オマージュ作品」はいいですか?

ゴッホ、モネなどの名画をモチーフにする場合、「オマージュ(敬意を込めた再解釈)」であればOKです。

ただし、構図や色をそのまま再現した“模写”は不可となります。

OK  出展できる例
・ゴッホの《星月夜》に着想を得て、自分の街の夜空を刺繍
・モネの《睡蓮》の色彩を参考に、自分の庭の池を表現
・名画の色調や筆致を参考に、全く新しい構図で制作

NG  出展できない例

・ゴッホの《ひまわり》をそのまま刺繍で再現 

補足

ゴッホ、モネのように著作権が消滅している作品は自由に題材にできますが、
美術館や書籍の写真画像をそのまま使うことはNGです。
 

作品解説文には「〇〇に影響を受けてオマージュ制作」など、参考元を明記し、オリジナル要素も作品に加えて仕上げてください。
 

オマージュ作品について
 

名画や、過去の芸術作品からインスピレーションを受けて制作する「オマージュ作品」は、敬意を込めた再解釈として素晴らしい創作方法のひとつです。

ただし、構図や色、モチーフが原作とあまりに似ている場合、見る人によっては「模倣」「パクリ」と受け取られてしまうことがあります。

AI生成画像で作った下絵を元に刺繍してもいいですか?

近年、AI画像生成ツールを使って下絵を制作する方も増えています。

これらを活用した刺繍作品も、ご自身の創作意図や操作によって生み出されたものであれば、オリジナル作品として認められます。

ただし、AIを使う際にはいくつかの点に注意が必要です。

プロンプト(指示文)や構図・テーマを自分で考えた上で生成した画像であること
・他者が作成したAI素材・テンプレート・商用配布画像などをそのまま使用していないこと
・著作権を侵害する可能性のある素材(既存キャラクターやブランド、写真など)を含まないこと

AIは便利な創作ツールですが、あくまで「自分の表現を助けるための手段」として使うことが大切です。

あなたの発想や感性が主役であり、AIはその“補助”のひとつとお考えください。


 

写真を布にプリントして刺繍を加えるのはオリジナルですか?

コラージュ・写真刺繍・プリント布などとの組み合わせで、

ご自身が撮影または制作した写真や絵をもとに刺繍を施す場合はオリジナル作品です。

他者が撮影・制作した画像を無断で使用した場合は著作権侵害となるため、出展できません。

「オリジナル」とは、誰の真似でもなく、あなたの視点と手から生まれる作品のこと。


伝統・芸術・文化への敬意を忘れずに、そこに自分の物語や感情を添えてください。 

 

刺繍アートフェスティバルの審査は、専門家だけでなく、会場を訪れた来場者の方々による投票によって行われます。

つまり、あなたの作品は「刺繍を学ぶ人」だけでなく、「一般の来場者」「初めて刺繍に触れる人」の目にも触れるということです。
 

そのため、出品作品には作品としての美しさだけでなく、見る人への配慮も大切と考えています。
 

規約・ルールを守ることはもちろん

性的・暴力的・差別的表現
他人を傷つける意図を含むものなど

誰かを不快にさせたり、誤解を招くような表現を避け、
誰もが心地よく感じられる作品づくりを心がけてください。

 
皆さんの作品に込められた“想い”と“個性”に出会えることを楽しみにしています。 

福田彩